パワハラ上司にどうやって自覚させようか…
職場でのパワハラは、全労働者にとって深刻な問題です。
しかし、加害者本人が自覚していないケースが非常に多いことをご存知でしょうか。
この疑問に対して私は、津野香奈美氏の著書『パワハラ上司を科学する』を読んで、自分なりに原因を考え出しました。
- そもそも罪悪感がない
- 他人を利用することをためらわない
- 相手の感情を読み取ることができない
そもそも、加害者には「パワハラをしてはいけない」という思考回路がありません。
ではどうすればいいのでしょうか?
私は、パワハラ上司の上司への相談から始まり、最終的には転職しかないと思っています。
というのも、私がパワハラ上司2人に対処しようと思いましたが、個人レベルでは全く効果がなかったからです。
本著で読んだ内容とも合致しました。
本記事では、この書籍から得られた知見をもとに、パワハラ加害者の自覚なしの状態がなぜ生まれるのかついて詳しく解説します。
「パワハラ上司が改心しない」という前提で、次に起こすべき行動が明確になるはずです。
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目次
新書『パワハラ上司を科学する』を読んで
『パワハラ上司を科学する』は、産業医である津野香奈美氏が執筆した、パワハラのメカニズムを科学的に解明した書籍です。
この本では、心理学や社会学の研究成果をベースに、なぜパワハラが起こるのか、加害者がなぜ無自覚なのかが詳細に説明されています。
パワハラ対策を本格的に考えるきっかけになる
この書籍は、一言でいうと「パワハラ研究の決定版」です。
特にパワハラがどうにかならないか…と考え詰めている人にとってオススメ。
すべての疑問やモヤモヤを解消して、次に起こすべき行動を明確にしてくれます。
- なぜパワハラは発生するのか
- パワハラしやすい人はどういう性格なのか
- パワハラ気質な人の特徴
本書を読むことで、感情的な対応ではなく、論理的かつ効果的なパワハラ対策を考えられるようになります。
前職の2人のパワハラ上司が当てはまった
筆者自身も前職で2人のパワハラ上司に悩まされた経験があり、この書籍の内容が驚くほど一致していました。
- 良心が異常に欠けている
- 自分の利益のためには部下の犠牲をいとわない
- 自尊心が不安定
どちらの上司も、自分の行動がパワハラだという自覚は全くなく、むしろ「部下を育てている」と信じていた点が共通しています。
この条件3つを満たすとパワハラ!
厚生労働省は、パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」と定義しています。
具体的には、以下の3つの条件をすべて満たす行為がパワハラに該当します。
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
優越的な立場を利用している
優越的な立場とは、上司と部下という関係だけでなく、業務上の知識や経験の差も含まれます。
「断れない立場」を利用した行為全般が、この条件に当てはまるのです。
例えば、先輩が後輩に対して行う行為や、専門知識を持つ社員が持たない社員に対して行う行為も該当する可能性があります。
つまり、役職の有無に関わらず、相対的な力関係が存在すればパワハラは成立します。
業務上必要な範囲を超える
業務上必要な指導や注意は、当然ながらパワハラには該当しません。
しかし、必要以上に厳しい叱責や、人格を否定するような言動は業務上必要な範囲を超えています。
例えば、ミスを指摘する際に「何度言えばわかるんだ」と人格否定する発言は、明らかに業務範囲を超えた行為です。
また、達成不可能なノルマを課したり、逆に能力に見合わない単純作業ばかり与えたりする行為も該当します。
労働者の就業環境を害する
パワハラによって、労働者が苦痛を感じ、就業環境が不快になることが3つ目の条件です。
具体的には、精神的なストレスで体調を崩したり、職場に行くことが怖くなったりする状態を指します。
この条件は客観的な判断が難しく、被害者の感じ方によって異なる場合もあります。
ただし、一般的な労働者が同じ状況で苦痛を感じるかどうかが判断基準となるでしょう。
パワハラを自覚させることが不可能である理由3選
パワハラの加害者に自覚を促すことは、実はほぼ不可能だと『パワハラ上司を科学する』では指摘されています。
被害者側が「上司に気づいてもらおう」と努力しても、状況が改善しないのには明確な理由があります。
ここでは、加害者の自覚なしの状態が続く3つの理由を解説します。
そもそも加害者は罪悪感を感じていない
パワハラ加害者の多くは、自分の行動を「指導」や「教育」だと認識しており、罪悪感を全く感じていません。
むしろ、「部下のために厳しく接している」と考えているケースが大半です。
心理学的には、このような認識のズレを「認知的不協和」と呼びます。
自分の行動と実際の結果が矛盾していても、脳が自動的に都合の良い解釈をしてしまうのです。
目的のためには手段を選ばない原因でもあります。
罪悪感がない以上、加害者が自ら行動を改めることは期待できないでしょう。
加害者は高い社内評価を受けている
パワハラ上司の多くは、実は会社から高い評価を受けている場合が少なくありません。
というのも、パワハラに長けている人は2つの特性を兼ね備えているからです。
- 行動力・実行力がある
- 自分を魅力的に見せることに長けている
そのため、部下がパワハラを訴えても「あの人がそんなことをするはずがない」と信じてもらえないケースが多発します。
また、加害者自身も「会社に認められている」という自信があるため、自分の行動を疑うことがありません。
組織からの肯定的なフィードバックが、無自覚を強化してしまう悪循環が生まれているのです。
他人を利用することを躊躇しない
また、パワハラ気質の人は他人を利用することにためらいがない傾向があります。
以下はエンキャリの元上司に当てはまっていた行動です。
- 自分の評価を上げる目的で部下を助ける
- ウワサを意図的に流して自分の評判を上げる
- 逆にウワサを流して周囲の人間を下げる
根回しに長けており、個人レベルで訴えても「あの人がそんなことするわけない」と一蹴されるケースもあります。
したがって、被害者が加害者個人に働きかけても、根本的な解決にはつながりません。
無自覚パワハラの例
厚生労働省は、パワハラを6つの類型に分類しています。
加害者の多くは、自分の行動がこれらに該当していることに気づいていません。
ここでは、無自覚のまま行われやすいパワハラの具体例を紹介します。
精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、人格を否定する発言や、侮辱的な言葉を浴びせる行為を指します。
- 「こんなこともできないのか」
- 「お前は役に立たない」
といった発言が典型例です。
加害者は「ハッパをかけている」「叱咤激励している」と考えており、相手を傷つけている自覚がありません。
また、他の社員の前で叱責したり、メールやチャットで攻撃的な言葉を使ったりする行為も該当します。
人間関係からの切り離し
特定の社員を意図的に孤立させる行為も、パワハラの一種です。
会議に呼ばない、情報を共有しない、挨拶を無視するなどが具体例として挙げられます。
嫌いな部下を辞めさせるための攻撃としても利用されます。
しかし、組織の一員として必要な情報やコミュニケーションを遮断することは、明確なパワハラです。
過大な要求
明らかに達成不可能な業務量を押し付けたり、能力を超えた仕事を命じたりする行為が過大な要求です。
例えば、新入社員に経験者レベルの成果を求めたり、1人では終わらない量の仕事を期限内にやれと命じたりします。
加害者は「自分も若い頃は同じように頑張った」と考えており、無理な要求だという認識がありません。
また、休日出勤や長時間残業を強要することも、過大な要求に該当する可能性があります。
過小な要求
逆に、能力に見合わない簡単な仕事ばかり与えることも、パワハラの一種です。
嫌がらせとして雑用ばかり命じたり、本来の業務から外して何もさせなかったりする行為が該当します。
「使えない人間には簡単な仕事で十分」という考えが背景にあるケースが多いです。
被害者は成長の機会を奪われ、自信を失っていく悪影響が生じます。
個の侵害
プライベートに過度に踏み込んだり、個人情報を詮索したりする行為が個の侵害です。
休日の予定をしつこく聞いたり、家族構成や恋愛関係について不必要に質問したりすることが該当します。
加害者は「部下のことを気にかけている」と考えている場合がありますが、実際には境界線を越えた行為です。
パワハラ気質の人の特徴
パワハラを起こしやすい人には、いくつかの共通した特徴があります。
『パワハラ上司を科学する』では、心理学的研究に基づいて、パワハラ気質の人の傾向が分析されています。
前提として「加害者は無自覚」である
パワハラ気質を持つ人の最大の特徴は、自分の行動が問題だと認識していない点です。
本人は「正しい指導をしている」「会社のためにやっている」と信じており、悪意がありません。
周囲から指摘されても、「誤解されている」「部下が弱すぎる」と考えてしまいます。
この無自覚さこそが、パワハラ問題を解決困難にしている最大の要因なのです。
部下に自分と同じ水準を要求する
パワハラ気質の人は、自分が過去に経験した働き方を絶対的な基準として、部下にも同じレベルを求める傾向があります。
「自分も若い頃は深夜まで働いた」「休日返上で頑張った」という経験を美徳と考えているのです。
しかし、時代背景や個人の状況が異なることを理解できず、一律の基準を押し付けてしまいます。
この思考パターンは、世代間ギャップが大きい職場で特に顕著に現れるでしょう。
自尊心が不安定(実は自信がない)
パワハラ加害者の多くは、表面的には自信があるように見えます。
しかし、内面では自尊心が不安定な場合が多いと言います。
特に、自分より優秀な部下や、自分とは異なる働き方をする部下に対して攻撃的になる傾向があります。
自分の立場が脅かされるのではないかという恐怖が、パワハラ行動を引き起こす原因となっているのです。
感情知能が低い
感情知能とは、自分や他者の感情を認識し、適切にコントロールする能力のことです。
パワハラ気質の人は、特に怒りの感情をコントロールできず、衝動的に部下を叱責してしまいます。
また、相手がどう感じているかを想像する共感力も低いため、自分の言動が相手を傷つけていることに気づきません。
感情知能の低さは、幼少期の育ち方や過去の経験が影響している場合が多いとされています。
パワハラが起こりやすくなるタイミング
パワハラ気質を持つ人でも、常にパワハラを行うわけではありません。
特定の条件が重なったときに、パワハラ行動が表面化しやすくなることが研究で明らかになっています。
睡眠時間が短い
睡眠不足は、感情のコントロール能力を著しく低下させます。
十分な睡眠が取れていないと、些細なことでイライラしやすくなり、攻撃的な言動が増えるのです。
『パワハラ上司を科学する』では、睡眠時間が6時間未満の管理職は、パワハラリスクが顕著に高まると指摘されています。
長時間労働が常態化している職場では、睡眠不足の上司によるパワハラが発生しやすい環境が整っているでしょう。
ストレスが溜まっている
仕事や私生活でのストレスが蓄積すると、感情の暴発が起こりやすくなります。
特に、自分自身が上司から厳しく詰められている状況では、そのストレスを部下に向けてしまうケースが多いです。
この現象は「ストレスの転嫁」と呼ばれ、組織内で連鎖的にパワハラが広がる原因となります。
ストレスマネジメントができていない職場では、パワハラが構造的に発生しやすいと言えるでしょう。
パワハラが起こりやすい構造的要因
パワハラは個人の問題だけでなく、組織や社会の構造が深く関わっています。
特に日本の企業文化には、パワハラを助長する要素が複数存在すると『パワハラ上司を科学する』では分析されています。
「同質性」が非常に高い日本社会
日本企業は、社員に対して高い同質性を求める傾向があります。
「みんなと同じように働く」「会社の価値観に合わせる」ことが暗黙のルールとなっている職場が多いのです。
このような環境では、異なる働き方や価値観を持つ人が排除されやすくなります。
「協調性がない」「やる気がない」とレッテルを貼られ、パワハラのターゲットになるリスクが高まります。
「つながり」と「組織へのコミットメント」
日本企業では、プライベートも含めた濃密な人間関係が重視される傾向があります。
飲み会への参加や休日のイベントへの出席が、暗黙のうちに義務化されている職場も少なくありません。
また、組織への過度なコミットメントが求められ、個人の生活よりも会社を優先することが美徳とされます。
これらの文化が、個の侵害や過大な要求といったパワハラを正当化する土壌を作り出しているのです。
結果として起こるパワハラ
上記のような個人的要因と構造的要因が組み合わさることで、様々な形のパワハラが発生します。
ここでは、実際の職場で頻繁に見られるパワハラの具体例を紹介します。
業務範囲を超えた要求をする
休日や深夜に連絡を取ったり、プライベートな時間に業務を命じたりする行為が該当します。
組織の繋がりが強すぎて、個人と組織の境界線があいまいになることが原因です。
「いつでも連絡が取れる状態でいろ」という要求も、業務範囲を超えた過度な干渉です。
加害者は「緊急時のため」「仕事熱心だから」と正当化しますが、部下の私生活を侵害しています。
メンバーの自由を制約する
休暇の取得を妨害したり、定時で帰ることを許さなかったりする行為が該当します。
「みんな残っているのに帰るのか」というプレッシャーをかけることも、自由の制約です。
組織全体で長時間労働が常態化している場合、このタイプのパワハラが蔓延しやすいでしょう。
優秀な部下を引きずり下ろす
同質性が強い組織だと、「飛び抜けて優秀な部下」を組織の水準に引きずり下ろすことがあります。
「同じでない」存在が非常に目立つからです。
たとえば、電卓で計算していた業務を、エクセルを使って一瞬で解決してしまったケースが想像しやすいと思います。
- 「やり方を変えるな」
- 「ミスが怖いから電卓で計算しろ」
優秀な人材が潰されてしまう職場では、組織全体の生産性も低下していくでしょう。
集団から排除する
特定の人物を意図的にチームの活動から外したり、孤立させたりする行為が該当します。
同じでない・異質な存在を仲間外れにする行為です。
情報を共有しない、会議に呼ばない、他のメンバーにも接触を避けるよう指示するなどの行動です。
これは人間関係からの切り離しというパワハラ類型の中でも、特に悪質なケースと言えます。
被害者は精神的に追い詰められ、退職に追い込まれることも少なくありません。
ではどう対処すればいい?
パワハラ加害者を自覚させることは困難だと理解した上で、被害者がとるべき具体的な対処法を解説します。
重要なのは、個人で抱え込まず、適切な手順で外部に助けを求めることです。
まず上司の上司に現状を相談
最初のステップとして、パワハラ上司のさらに上の管理職に相談することをおすすめします。
直接上司に言っても、効果は全くないと言ってもいいでしょう。
具体的な事例を記録し、日時や発言内容を明確に伝えることが重要です。
感情的にならず、客観的な事実を淡々と説明することで、信頼性が高まります。
ただし、組織全体でパワハラが容認されている場合、この方法では解決しない可能性もあるでしょう。
地域の労働局に相談
社内での解決が難しい場合は、都道府県の労働局に設置されている相談窓口を利用できます。
総合労働相談コーナーでは、専門の相談員が無料でアドバイスをしてくれます。
匿名での相談も可能なため、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
厚生労働省「総合労働相談コーナー」
異動願を出す
可能であれば、別の部署への異動を申し出ることも有効な対処法です。
人事部に相談する際は、異動理由を明確に伝え、パワハラの証拠があれば提示しましょう。
ただし、異動が実現するまでには時間がかかる場合が多いです。
その間も記録を取り続け、心身の健康を守ることを最優先に考えてください。
最後の手段は転職
組織全体でパワハラが容認されている場合は、状況の改善は見込めません。
本著でも、放任型リーダーのいる組織ではパワハラの発生率が4倍以上になるとい示されています。
転職を検討すべきかもしれません。
自分の心身の健康を犠牲にしてまで、その会社に留まる必要はありません。
面接では、前職の退職理由を前向きに説明できるよう、言葉を選ぶことも大切です。
まとめ:パワハラ上司を自覚させることは考えてはダメ
パワハラの加害者が無自覚である理由は、罪悪感の欠如、高い社内評価、そして構造的な問題が絡み合っているからです。
パワハラ気質の人の特徴として、部下に自分と同じ水準を要求したり、自尊心が不安定だったり、感情知能が低かったりする点が挙げられます。
また、日本企業特有の同質性や過度なコミットメントを求める文化が、パワハラを助長している構造的要因となっています。
最も重要なのは、被害者が「加害者を変えよう」とするのではなく、自分自身を守る行動を取ることです。
上司の上司への相談、労働局への通報、異動願の提出、そして最終的には転職という選択肢を持つことが大切です。
あなたの心身の健康は、どんな仕事よりも優先されるべきものなのです。
本業以外の収入源は必要、そんなことはわかっている。
問題は、色々探したのに ”自分に合った副業がまだ見つかっていない” ということ。
これは私自身がこれまで何度も迷走してずっと悩んできたことでした。
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