赤帽で開業するのってやめたほうがいいって本当?
個人事業主としてはたらける、軽貨物運送業「赤帽」。自分の働きたいタイミングで稼働できる魅力があるものの、稼げない、やめたほうがいいなど、いろいろな噂を聞きますよね。実際はどうなんでしょうか?
調べてみました。
結論、主体的に営業できない人はやめたほうがいいです。
・開業資金(150万円~200万円)をかけられる人
・営業努力をつづけられる人
・不安定な収入に耐えられる人
・雇われではなく個人事業主として働きたい人
赤帽での働きかたは、あくまで個人事業主だからです。
自分のスケジュールを埋めて、あふれた仕事を他の組合員に紹介できるようになって、初めて収入を安定させることができます。
組合から仕事をあっせんされるのを待っていたら、確実に稼げません。
赤帽とは
赤帽は、「全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会」の通称です。ざっくり言うと軽トラックを使った運送業者の協同組合です。
仕事内容(軽貨物運送業)
赤帽はいわゆる「軽貨物運送業」に分類されます。運搬は積載量350Kgの軽トラックでおこなうため、小規模な仕事がメインです。
引越し作業
赤帽の代表的な仕事は引越し作業です。単身者向けの引越しはもちろん、事務所移転も引き受けています。
大きなトラックを使う他の業者にくらべ、安い料金で利用できるのが強みです。
ルート配送
定期的に荷物を運ぶルート配送の業務もあります。
それも継続的なものではなく、必要なときに、必要な場所に届けられることを強みにしています。
緊急貨物のチャーター便
緊急の貨物をその日のうちに配送する業務もあります。
他のサービスに比べたときの、赤帽の最大の強みではないでしょうか?ドライバーにとっては大変ですが、その分報酬も高く設定されています。
収入や手取りは?
赤帽の年収は、おおよそ250~450万円と言われています。単価から計算してみても、大体このあたりにおさまります。
例)スポットを25回引き受けた場合
単価:5,000円~1.5万円
5,000円~1.5万円×25日=月収12.5万円~37.5万円
赤帽のサイトによると、1か月で80万円達成した人もいるそうです。
しかし、一度月収80万円に達したとしても、継続して達成することは非常に難しいはずです。スポットの仕事が多い赤帽で、毎月同じペースで受注できるはずはないからです。
特に、引っ越し業務は3月4月に集中します。夏などの閑散期には、収入が減少することが予想されます。
年収1000万は可能か?【無理です】
赤帽の仕事で年収1000万円を稼ぐことはまず無理です。
軽く試算してみました。
年収1000万を達成するためには(月収ベース)
・スポット収入
30日×単価27,000円=81万円
※単価27,000円は走行距離200km以上の案件
・仲間へ仕事のあっせんすることによる紹介料
1万円の案件×10件紹介(15%)=1.5万円
・仕事を配送センターへ依頼することの手数料
1万円の案件×10件紹介(10%)=1万円
⇒月収83.5万円×12か月=1,002万円
どうしても達成したいなら、360日労働×1日200km走行で達成できます笑。営業する時間もないので、常人には無理ですね。
参考:赤帽首都圏軽自動車運送協同組合
赤帽は個人事業主
赤帽ドライバーは個人事業主です。サラリーマンではないため、収入も働いた分だけとなります。
仕事のやり方やスケジュールを自分で決められる自由がある一方、休んだ分はそのまま収入が減ることになります。
サラリーマン以上の自己管理が求められるため、こうした点を理解した上で、自分に合った働き方かどうかを考えることが大切です。
廃業率は?
赤帽自体の廃業率はわかりませんでしたが、赤帽に該当する、軽貨物運送業の倒産件数を調べることができました。
2023年の倒産件数は1989年以降最多
2023年における、軽貨物運送業の倒産件数は49件と過去最多になりました。
・人手不足
・燃料高騰
・運賃の引き上げ難
・新規業者の参入による、競争激化
廃業率が高いと一概は言えませんが、少なくとも「稼げなくなってきている業界である」ことは間違いないでしょう。
赤帽はやめたほうがいいという理由・デメリット

収入が不安定
赤帽は完全歩合制の仕事で、安定した収入を見込むことは難しいです。
どれだけ仕事を受けるかによって、収入が大きく変わるからです。また、いくら仕事ができる状態でも、繁忙期と閑散期の差もあるため、収入がばらつきます。
よって、その月に稼げたからといって散財することには、大きなリスクが生まれます。
固定給が欲しい人にとっては、赤帽はやめたほうがいいと言えます。
最初は仕事が取りにくい
赤帽に加入したからといって、すぐに仕事がもらえるわけではありません。
たしかに、赤帽は仲間から仕事を振ってもらえる仕組みがあります。しかし、自分のお客さんを持たなければ継続的に仕事を取ることはできません。
地道に実績を積み、顧客を増やしていく努力が必要ですが、その間の生活費をどうするかも考えておかなければなりません。
貯金がゼロに近い人が本業でやろうとするのは、やめたほうがいいです。
初期費用が高い
赤帽を始めるには、150万~200万円の資金が必要です。
- 加入金 … 275,000円
- 書類作成料 … 55,000円
- 出資金 … 50,000円(脱退時に返金)
- 車両購入 … 100万~150万円
特に車両購入費は大きな負担となり、ローンを組む場合は毎月の返済も考慮する必要があります。開業前に十分に計画を立てておかないと、借金だけが残ることになります。
初期投資を短期間で回収しよう!と思う人でなければ、やめたほうがいいです。
費用が継続的にかかる
初期投資だけでなく、赤帽は毎月の固定費も発生します。
- 組合賦課金 … 約15,000円
- 斡旋手数料 … 10%~15%(仕事の紹介を受けるための手数料)
- 無線使用料・共済会費など … 約20,000円
組合費や共済会費は、仕事が少ない月でも支払う必要があります。
そのため、一定以上の仕事をこなさなければ、思ったより収入が伸びません。毎月の固定費をまかなうだけの仕事を確保できるかどうかも、赤帽開業するための判断基準になります。
計画が立てられない人もやめたほうがいいといえます。
営業しないと収入が伸びない
赤帽はただ待っているだけでは収入は増えません。組合の紹介だけでは収入に限界があるためです。
自分で取引先を開拓し、リピーターを増やす営業努力が必須になります。
・丁寧な配送
・積極的なコミュニケーション
積極的に営業活動をしないと、安定した収入を得るのは難しいでしょう。
指示待ちで働きたい人にとっては、「やめたほうがいい仕事」になります。
新規事業者の参入による競争激化
冒頭で説明した、過去最高の倒産を記録している理由にもなります。コロナ禍で軽貨物運送業は人気が高まり、新規参入が増えています。
今から個人が赤帽として参入する場合は、きちんと稼げるかを事前に調査しておかないと、まったく稼げないということになりかねません。
配送業は付加価値がつけにくく、どうしても価格競争になるからです。
赤帽だけでなく、他の運送業者との価格競争も厳しくなっています。ドライバーの仕事は赤帽以外にもあるので、無理して赤帽を選ぶ意味はありません。
赤帽で成功するためのポイント

組合員同士のつながりを作る
赤帽は、完全に一人ではたらくのではなく、組合員同士のつながりを作っておくことが重要です。
他の組合員から仕事を回してもらうことができるからです。困ったときに仕事をお願いしたり、逆に仕事がない時に紹介してあげることができます。
また、仕事のやり方など経験者の知識を学ぶことで、一人で仕事をするよりも大きな手助けを得ることができます。
赤帽ブランドをふんだんに使う
個人で軽貨物運送を始める場合、最初のうちは信用を得るのが難しいことが多いです。しかし、赤帽に加盟すれば「赤帽」というブランドを使うことができます。
赤帽ブランドは全国で知名度があるため、個人で営業するよりも仕事を受けやすくなるのが強みです。
確かに、共済会費や加入金を収める必要はあります。しかし、個人の信用をイチから築く必要はありません。開業してすぐに仕事を始めやすいのもメリットです。
組合から仕事を紹介してもらう
赤帽では、組合を通じて仕事のあっせんを受けることができます。
・ほかの組合員から仕事を受注できる
・組合自体から仕事をもらえる
もし個人の力だけで始める場合は、自分で営業して仕事を獲得する必要があります、
しかし、赤帽なら組合のネットワークを活用できるため、開業初期から仕事を得られるチャンスがあります。
もちろん、すべての仕事を紹介してもらえるわけではありません。自分からも努力する必要があります。ところが、組合のサポートがあることで、安定した収入を得られる可能性が高くなります。
自分の仕事を紹介して手数料をもらう
赤帽では、自分の仕事を他の組合員に紹介する制度があります。自分が受けられない仕事を他の組合員に回すことで、手数料を受け取ることができるのです。
例えば、自分のスケジュールが埋まっていて対応が難しいときに、別の組合員に依頼することが可能です。その一部を手数料としてもらえる仕組みです。
赤帽の最大の強みであり、仕事を逃さずに収益を増やす手段のひとつになります。仲間とのネットワークを活用することで、お互いにうまく収益を伸ばすことが可能です。
自分で仕事のペースを調整する
赤帽は個人事業主のため、仕事の量を自分で調整することができます。
会社員のように決められた時間に働く必要がなく、自由なスケジュールを組むことができます。収入を増やしたいときには仕事を増やし、休みたいときには調整することも可能です。
また、例えば、プライベートの時間を大切にしたい人や、副業として働きたい人にとってはメリットが大きいです。
自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるのは、赤帽の大きな魅力のひとつです。
新規開拓の営業をする
赤帽の仕事は、組合からの紹介だけでは限界があります。安定して収入を得るためには、自分で顧客を増やすことは必須です。
例えば、組合から紹介してもらった取引先へ配達する際、丁寧な対応を心がけるなどです。
また、「〇〇のエリアで配送できそうな仕事ってないですかね?」と、自分から配送ニーズを聞いてみるのもいいかもしれません。
- 企業への直接営業
赤帽は、企業への直接営業が可能です。ルート便の仕事を獲得するために、地元の会社や店舗に直接営業をかけることもできます。(赤帽のWEBサイトにも書いてあります。)
- リピーターを増やす
一度利用したお客さんに再び利用してもらうために、丁寧な対応を心がける。荷物を大切に扱う、時間厳守を徹底するなど、小さな信頼の積み重ねがリピーター獲得につながります。
どちらにしても、受け身だけだと組合からの印象も悪いですし、主体的な行動が求められます。
経費を見なおす
赤帽で利益を出すには、売上を増やすだけでなく、無駄な出費を抑えることも必要です。軌道に乗る前はこちらの方が重要かもしれません。
- 燃料費の節約
ガソリン代は大きな経費のひとつです。エコ運転を心がける、安いガソリンスタンドを利用する、走行ルートを見直すなどの工夫で、コストを抑えられます。 - 昼食を持参する
家から弁当や安い昼食を持参するといいかもしれません。長距離の移動になる場合、昼食を買うときに安い場所が見つからない可能性があるからです。
営業スキルを磨く
赤帽で成功するためには、「運ぶ」だけでなく、「売る力」も必要です。営業スキルを磨くことで、新しい仕事を獲得し、収入を安定させることができます。
営業スキル向上のポイント
- 配達先に明るくあいさつをする
配達先と明るくコミュニケーションを取ることも営業です。当たり前ですが、愛想の悪いドライバーにまた配達を頼みたい人はいません。たとえば、ヤマトの運ちゃんが明るく宅配してくれると、ちょっといい気分になりますよね。 - 人脈を広げる
ほかの赤帽組合員とのつながりを増やすことで、仕事を紹介してもらえる機会が増えます。情報交換を積極的にするなど、交流を持つことが大切です。
まとめ:自分で営業できない人はやめたほうがいい。

赤帽はただの運送業ではありません。個人事業主として、自己管理や営業力が必要な仕事です。
受動的にかまえていては、投資した費用を回収するのが遅くなりますし、なによりモチベーションが下がります。
自分から主体的に行動できる人ほど向いている職業です。