試用期間でクビになることってあるの?
試用期間でのクビがこわい!
クビになって短期離職になりたくない
試用期間中にクビになる確率は何%?
試用期間って「お試し期間」みたいな印象を受けますが、実際はどうなんでしょうか?クビにできるのか知りたいけど、面と向かって人事に聞くのは気まずいですよね。
試用期間中にクビになる確率は3%です。ざっと計算してみました。計算方法は下記の見出しから飛んでみてください。
真面目に働いていればクビになることはほぼありません。試用期間中といえど、法律に守られているからです。よっぽどの能力不足でも、解雇された判例はほぼありません。心配はいらないでしょう。
・試用期間中にクビになることはほぼない
・ただし、クビが認められた事例もある
・クビになる可能性がある会社は、そもそも辞退すべき
しかし、裁判の例を見ると本採用になった後と比べ、解雇のハードルは低いのは事実のようです。気を抜いていいという理由にはなりません。
この記事では、試用期間中にクビになるケースと、クビにならないためにどうすれば良いかをご説明します。
Contents
そもそも試用期間とは

試用期間がある理由
試用期間とは、正社員としての雇用契約を結ぶ前に、一定期間の業務を通じて社員の適性を確認するための期間です。
この期間中に、従業員を会社で働いていく上で適性があるかどうかを判定します。業務遂行に問題がなければ、正式な社員として採用されることが一般的です。
面接に合格したからといって、いきなり本採用にするのは企業側にもリスクがあります。試用期間は、求人を見る限りほぼすべての企業で設けられています。
試用期間の適切な長さとは
試用期間の長さは、企業や職種によって異なります。ハローワークなどの求人票を見ても、3ヶ月から6ヶ月程度に設定している会社が多いです。
100件近く求人を見た限り、試用期間を設定していない会社はほとんどありませんでした。
試用期間を3か月に設定している企業もある中で、6か月に設定している会社は本採用に対して慎重であることがうかがえます。能力を慎重に見られるでしょう。
期間中でもクビになることはある?

試用期間中にクビになる確率は?
試用期間中にクビになる確率はズバリ約3%です。自分から問題を起こしたりブラック企業に入らない限りは、安心できる数字ではないでしょうか?
パーソルキャリアとマイナビの調査から、ざっくりと計算してみました。精度は高くないと思いますが、おおよその状況はつかめるのではないかと思います。
①退職経験者の20.2%が「実際は会社都合だった」と回答し、「実際に自己都合だった」は79.8%でした。※1
⇒クビになる確率20.2%
②また、実質会社都合なのに、強制的に自己都合に促されるケースもあります。「ほぼ強制的に自己都合退職にされた」割合は13.9%なので、これもクビとみなします。※1
⇒クビになる確率 (79.8%×13.9%)+20.2%=31.3%
③次に、直近1年間に転職した人の前職の勤続年数です。「1年未満」が20.1%です。※2
しかし、1年未満に比べ、試用期間である半年以内に退職する人は減ると考えられます。仮に2分の1とします。⇒
⇒クビになる確率 31.3%×20.1%÷2=3.1%
つまり、約3%です。
相当ざっくりとした計算ですが、大きく外れてもいないのではないでしょうか。クビになるのはよっぽどの場合です。
※1『Job総研による「2023年 自己都合退職の実態調査」を実施 都合よく処理される退職者 6割が強制や促しで渋々自己都合に』パーソルキャリア
※2『転職活動における行動特性調査2024年版』マイナビ
試用期間中でも簡単にはクビにできない
試用期間中であっても、企業は従業員を簡単にクビにはできません。
労働法(労働基準法、労働契約法)によると、解雇には正当な理由が求められます。単なる気に入らない、仕事ができないというクビにできません。
解雇について争った判例によると、明らかに従業員に非がある場合でなければ、会社側に不利な判決が出ています。よっぽどの能力不足でも、クビが妥当として認められた判例はほとんど見つかりません。
お試し期間だからクビしやすいというわけではありません。真面目に勤めていればいずれ本採用されるのが通常です。
しかし試用期間中クビになる確率は0ではない(本採用拒否)
しかし、試用期間中にクビになる確率はゼロではありません。
この場合、形式上は解雇ではなく本採用拒否という形になります。試用期間といえど、実質的なクビと言えるものです。
試用期間中は確かにクビになりにくいです。とはいえ、それは正当な理由がない場合です。妥当な理由さえあればクビできます。
また、ベンチャー企業や中小零細企業では、さらに注意が必要です。大手企業と比べ順法意識が薄い会社が多いため、「気に入らない」「仕事ができない」という主観的な理由でクビにするケースもあります。
契約社員スタートは期間満了というリスクがある
契約社員として試用期間が設けられている場合、期間満了した時点でクビ(打ち切り)になる可能性があります。
試用期間をわざわざ契約社員スタートに設定している場合、何かしらの目的があるはずです。
試用期間中の契約社員は有期雇用です。契約期間が終了した時点で打ち切られても、不思議ではありません。
求人票に試用期間(契約社員)と言ったような表記がある会社は要注意です。私なら応募しません。
試用期間中のクビが正当と認められる理由

著しい能力不足によるクビ
試用期間中に解雇される最も一般的な理由の一つが、著しい能力不足です。企業は試用期間を通じて、採用時に予測された能力が、期待する水準に達しているかを評価します。
ただ、能力不足の解雇が妥当とされた判例は見当たりませんでした。逆に、不当解雇とみなされた判例の方が多いようです。よっぽどの能力不足でも、クビは妥当と認められにくいです。
唯一見つけられたのは、高給かつ即戦力が求められるポジションでの能力不足のクビです。解雇が妥当とされたのは、年収1000万円の部長採用でした。
平社員の試用期間程度では、能力不足を理由に解雇することは難しいと思われます。
参考:『社会福祉法人どろんこ会事件(東京地判平31・1・11) 年収1000万円で採用した部長の本採用拒否 期待した「管理能力」を欠く』労働新聞社
経歴詐称、ウソの発覚によるクビ
経歴詐称や嘘が発覚した場合、試用期間中であっても即座に解雇されることがあります。企業を意図的にだます行為なので、バレたら完全にアウトです。
学歴詐称や職歴詐称に対しては、容赦なく妥当という判決が出ています。
都島自動車商会事件(大阪地裁判決 昭和62年2月13日)
この事例では、タクシー乗務員の職歴を隠して未経験者として同職種に応募して採用された労働者を、発覚後に経歴詐称を理由として懲戒解雇したことが有効と認められました。
勤務態度の不良、業務中の違反行為によるクビ
勤務態度が悪いまたは業務中に不適切な行為があった場合、試用期間中でもクビの理由とされます。
・無断欠勤(連続して2週間以上)
・意図的な損害
・横領
・刑事事件
これは本採用後でも同じですね。よっぽどのことをしなければクビにはなりません。
病気やケガで復職が難しい
試用期間中に、業務を続けることが困難なほどの病気やケガが発生し、復職が難しい場合、クビの正当な理由と判断されることがあります。
しかし、このケガが労災によるものである場合、解雇することはできません。
解雇制限
労働者が業務上負傷したり、病気になった場合に、その療養のために休業する期間及びその後30日間と、産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は解雇できません。
出典:『 労働条件:解雇、退職(解雇制限、解雇の予告、退職時の証明)』厚生労働省
試用期間中のクビを心配するのは、プライベートで復職が難しいほどのケガを負った場合のみです。
試用期間でクビにならないために

あまり気にしすぎない
試用期間中にクビになることを極度に心配すると、かえって仕事に悪影響を与えることがあります。
自分に無駄なプレッシャーを掛ければ、パフォーマンスを下げかねません。
試用期間はあくまで適性を確認するための期間です。最初から完璧な結果を求められるわけではありません。自分を過度に責めることなく、自分の業務に集中しましょう。
与えられた業務に集中する
試用期間中は、まず与えられた業務に全力で集中することが大切です。
入社直後の第一印象は、その後の評価を決める重要な要素です。余計な事を考えず、自分の担当範囲でしっかりと結果を出すことに集中しましょう。
業務にまじめに取り組む姿勢は、上司や同僚にも良い印象を与えます。信頼に足ると認められればそのまま本採用となるでしょう。
大きなトラブルを起こさないようにする
試用期間中にトラブルを引き起こすことは解雇のリスクを高める可能性があります。
入社直後のトラブルは上司の印象に強く刻み込まれます。「このまま採用しても大丈夫かな?」という印象を持たれかねません。
万が一問題が発生した場合は、上司に早急に報告しましょう。トラブルに対する対応の仕方によって、仕事への誠実さが評価されるかもしれません。
しかし、問題を起こさないに越したことはありません。試用期間中は特に慎重に行動することが大切です。
試用期間が契約社員の採用は避ける
前述の通り、試用期間が契約社員の待遇にあたる場合、契約満了時に打ち切られる可能性があります。
従業員を契約社員として採用する理由については、クビにしやすくなるからとは断言できません。しかし、正社員と比べ打ち切りやすいという点は間違いないです。
試用期間中の契約社員がクビにされまくっているという可能性もありますが、入社してからでないと、その内情を知ることは難しいでしょう。
であれば、最初からリスクの大きい求人には応募しないのが賢明です。よっぽどの好待遇でない限り避けるべきです。
リスク回避は入社前の会社選びから始まっている
試用期間中のクビを回避するための戦いは、入社前の企業選びの段階で始まっています。
ネットで会社の評判や社風について調査し、試用期間の制度がどのようになっているのかを確認しておきましょう。100人以上の規模であれば、評判がネットに転がっていることが多いです。
また、転職エージェントを利用している場合、担当エージェントに聞いてみるのも手です。直接応募では、会社の内情を聞きにくい場合もありますが、エージェント経由でなら聞ける場合もあります。
報連相をしっかり行う
試用期間中は、報連相を意識的に行うことが大切です。試用期間中に信頼を得ることができれば、本採用拒否にはなりにくいでしょう。
上司に対してコミュニケーションを取ろうとしない人は、不信感などから本採用拒否にされる口実を与えてしまいます。
試用期間中のクビが不当になり得るケース

十分な教育がなされない状態での能力不足によるクビ
試用期間中に解雇される理由として「能力不足」が挙げられます。しかし、企業が従業員に対して十分な教育や指導を行っていなかった場合、解雇が不当とされることがあります。
・労働契約法16条
(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
会社には解雇を回避する義務があります。従業員が能力不足と見なすなら、配置転換、教育などの努力を行う必要があります。
教育や指導が不十分であった場合、従業員が期待通りの能力を発揮できないのは必ずしも従業員の責任とは言えません。不当解雇と見なされ、クビが不当に当たる可能性が高いです。
結果のみで判断した能力不足によるクビ
結果だけで能力不足を判断した場合、不当解雇となる場合があります。
例えば、「今月の売り上げ目標を達成できなかったから」といった理由です。
会社からの指示を正しく実行しているにもかかわらず、目標を達成できないといった場合は、目標設定や指示自体に問題にあると考えられます。
試用期間中クビになる場合の前兆とは

前兆①:上司や教育担当者の態度が変化する
試用期間中にクビの前兆として、上司や教育担当者の態度に変化が見られることがあります。
例えば、これまで親切に指導してくれていた上司が、ある日から突然そっけない態度を取ってきたり、フォローしてくれなくなったりすることもあります。
その行動は、本採用拒否が決まってしまった事が原因かもしれません。
前兆②:それとなく自主退職をすすめられる
試用期間中に「このまま続ける自信があるか?」など、退職をほのめかすような会話をされた場合も、解雇の前兆として考えられます。
会社都合で解雇することは難しいので、間接的に退職を促すような言葉を掛けることがあります。
よっぽど適正の合わない会社に入らない限り、心配はいらないと思います。会社選びは慎重に行いましょう。
まとめ:クビのリスク回避は入社前から始まっている

試用期間中のクビを回避するための戦いは、入社前の会社選びから始まっています。
企業選びの段階で、労働条件通知書や試用期間の規定、社内の雰囲気について必ず確認しておきましょう。
入社したあとは、一生懸命仕事をするだけです。報連相をきちんと行い、大きなトラブルは絶対に避けましょう。